当総研の設立当初は、パソコンの普及、情報処理技術の飛躍的な向上を背景として、土地改良におけるコンピュータ利用の拡大が望まれていた。当時の主なテーマは、農業農村整備の分野におけるOA化の方向づけ、体制作りなど、今日のコンピュータ利用の基礎となるものであった。こうした調査研究は、それ以降「農業農村整備事業OA化推進対策調査」等に引き継がれ、全国的に必要性、汎用性の高いシステムとして関係機関で共同開発され、運用されてきている。現在、市町村が策定する農業農村整備事業管理計画の作成・提出を支援する事業管理計画システムのほか、傾斜地水田におけるほ場整備計画支援システム等の運用を行っている。
平成9年度から、農業農村整備事業の計画関連業務へのGIS利用を支援するための方策を検討するとともに、汎用的なシステムを開発するための調査研究を開始した。
その後、平成13年には、農業農村整備の計画・実施・維持管理等の各段階において活用することを可能とした汎用型のGISツールとして、農業農村整備事業支援システム(NN-Plan)を開発した。現在、農業農村整備分野におけるGIS技術活用のための入門的ツールとして利用されている。
また、平成16年には、農業農村整備に関係する団体や業務においてGISの利用普及を図るため、1/25,000の縮尺で農業水利施設や農地に関する地図情報を各機関が相互に活用できるよう、WebGISにより提供する日本水土図鑑GISを開発し、運用を行ってきている。このシステムでは、これまでに農村振興局や地方自治体が整備した基幹水利施設等のGISデータを、インターネットを通じて容易に閲覧、ダウンロードすることが可能となっている。平成19年度には、約7,000件のGISデータがダウンロードされるなど、農業農村整備分野の技術者のGIS利活用を支援し、普及を図るツールとして幅広く利用されている。
平成18年度から、1/2,500縮尺レベルの筆ごとの農地や耕区図、農業水利施設、地形図、航空写真(デジタルオルソ画像)等の基盤となる地図情報の上に、市町村、土地改良区、農業委員会、JA、農業共済等の団体が中心となって整備するさまざまな農地情報(基礎情報、農地基本台帳情報、営農情報等)を相互利用することを可能とする水土里情報システムの開発を行っている。
このシステムの開発により受益地や農業水利施設の効率的な管理、農地の利用集積の推進、耕作放棄地の実態把握を通じた耕作放棄地対策への活用などが期待されている。